時間が経過してカチカチに固まってしまった墨は、水で流すだけでは簡単に落ちません。無理に剥がそうとすると石肌を傷めるため、膠(にかわ)の性質を利用した正しい手順で落とす必要があります。
固まった墨を落とすステップ別手順
- ぬるま湯(30℃〜35℃程度)に浸ける:洗面器などに常温〜ぬるま湯を張り、硯全体を15分〜30分程度浸します。墨を固めている主成分である「膠」は動物性タンパク質のため、ぬるま湯に浸すことで自然にふやけて軟化します。
- 指の腹または柔らかい布で円を描くように撫でる:ふやけた墨を、指の腹を使って外側から内側へ優しく押し出すように洗い流します。
- 落ちにくい角は使い古した筆の毛先を使う:硯の縁や海(墨が溜まる深い部分)の隅は、柔らかい筆の毛先を使って掻き出します。
- 流水で完全にすすぎ流す:浮き出た墨の粒子が残らないよう、綺麗な水道水でしっかりすすぎます。
【警告】硯の寿命を縮める4大NG行為
- 熱湯をかける:急激な温度変化による熱膨張で、石にヒビが入ったり割れたりします。また高温によって膠が凝固・変質し、かえって取れなくなる場合があります。
- メラミンスポンジ・金属たわしで擦る:前述の通り、微細な鋒鋩を一瞬で削り落とし、磨墨機能を破壊します。
- ヘラやカッターナイフで削る:石の表面をえぐり、取り返しのつかない傷を作ってしまいます。
- 直射日光やドライヤーで急激に乾燥させる:石に含まれる水分が急激に失われることで、反りやクラック(亀裂)が発生します。