「胃から直接ニオイが上がってくる」という表現は日常的によく使われますが、人体の構造上、食道と胃のつなぎ目には下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)という強力な筋肉の弁が存在します。この弁は飲食物を飲み込む時以外は強固に閉じられており、通常の状態では胃の中の臭気成分がダイレクトに口元へ漏れ出ることはありません。
それにもかかわらず、実際に「胃由来の口臭」が発生するのは、主に以下の2大ルートが関係しているためです。
第1のルートは、胃内容物やガスの直接的な逆流です。加齢や肥満、食生活の乱れ、あるいは過剰な腹圧によって下部食道括約筋が緩むと、胃酸や未消化物、発酵ガスが食道を伝って咽頭付近まで逆流します。これがゲップと共に強烈な異臭を放つ直接要因となります。
第2のルートは、血流を介した肺からの呼気排出です。胃炎や消化不良、便秘によって消化管内でタンパク質が異常発酵すると、インドール、スカトール、硫化水素などの有害物質が生成されます。これらが腸壁から吸収されて血管内に入り、血液循環を経て肺胞に到達し、呼吸(吐く息)として体外へ排出されるのです。この場合、口をいくら洗浄しても息そのものから異臭が漂うことになります。