インターネット中継の普及に伴い、対局中の「食事休憩」はファンにとって最大のエンターテインメントへと変貌しました。かつて新聞観戦記の片隅に小さく記載されていた昼食メニューが、いまやリアルタイム速報として大手ポータルサイトのトップニュースを飾る時代です。
火付け役となったのは間違いなく、藤井聡太竜王の記録的快進撃でした。メディア各社の報道データを振り返ると、彼がタイトル戦で注文した地元食材のランチやスイーツは、直後から注文が殺到して即日完売が当たり前となっています。しかし、人気の根底にあるのは単なる「聖地巡礼」や「ミーハー心」だけではありません。
8時間から長ければ2日間に及ぶ極限の思考戦において、棋士が消費するエネルギー量はフルマラソンに匹敵するとも言われます。その過酷な戦場において、藤井聡太の勝負めし理由を紐解くと、奇をてらった高級食材ではなく「消化の良さ」「午後の集中力を切らさない適度な糖質」「地元への敬意」が極めて冷徹かつ合理的に計算されていることが分かります。ファンは盤上の神がかり的な妙手と、昼休みに見せる等身大の食事選びとのギャップに強烈な親近感を抱き、それが国民的なムーブメントへと結実したのです。
さらに、松本渚氏による漫画『将棋めし』やその実写ドラマ化によって、「棋士が何を食べるかで心理戦を仕掛けている」という盤外の知略が可視化されました。将棋めしドラマ漫画のネットの反応を検証すると、「対局相手のスタミナや胃袋の調子まで推し量るプロの執念に驚愕した」「単なるグルメ漫画ではなく極上の心理劇」といった高評価が相次ぎ、一般層へカルチャーとして定着する決定打となりました。