ネット検索で「さつまいも 中が赤い」と打ち込むと、短絡的に「赤い斑点は猛毒の赤カビなので即捨てろ」と過度な危機感を煽る言説が散見されます。しかし、ここには専門知識の欠落による重大な誤解が存在します。
見落とされがちな盲点は、さつまいもの維管束組織そのものが持つ防御反応です。さつまいもは土壌中で害虫や寒冷ストレスを受けると、傷口を塞ぐためにポリフェノール化合物を急速に分泌・集積させます。これが包丁を入れた際に断面の所々に小さな赤い斑点や赤い点々として現れる「リグニン化現象」です。この生体防御反応による斑点は組織が固く引き締まっており、カビではありません。
本物の赤カビとの見極めポイントは、さつまいもが腐っているかの見分け方として極めて明快です。カビによる変色は、組織の表面にフワフワとした菌糸が付着しているか、斑点の中心がスポンジのようにスカスカになり、水気が抜けて陥没しています。一方で生理現象による斑点は、周囲の健全な果肉と同じ硬度を保っており、水分もしっかり維持されています。この決定的な差異を知らないまま、可食部を無闇に捨ててしまうのは食品ロス以外の何物でもありません。