現場のリアルな人々の意識はどうなっているのでしょうか。イスタンブール市民やアナトリア地方の住民を対象とした各種世論調査や現地取材からは、世代や居住地域による興味深い意識の断層が見えてきます。
イスタンブール西部のベシクタシュやカドゥキョイといった洗練された都市部に住む若者層に話を聞くと、「私たちは価値観の上で完全にヨーロッパ人であり、西欧のカルチャーや自由なライフスタイルを共有している」という答えが頻繁に返ってきます。カフェでエスプレッソを飲み、夜はバルでビールやワインを楽しむ光景は、パリやローマの日常と何ら変わりません。
一方で、首都アンカラ以東のアナトリア内陸部や保守的な地域では、家族観や道徳観において敬虔なイスラムの価値観が根強く息づいています。「無理に冷淡なヨーロッパの仲間入りを目指す必要はない。我々は栄光あるオスマンの歴史を受け継ぐイスラム国家であり、独立した誇り高きトルコ人だ」という意見が大きな共感を集めています。
実際にトルコを訪れた日本人旅行者からも、リアルな驚きの声が多く上がっています。
「イスタンブール空港に降り立った瞬間は完全に先進的なヨーロッパのハブ空港という印象だったが、旧市街を歩くとアザーン(礼拝の呼びかけ)が街中に響き渡り、一気にオリエンタルな世界に引き込まれた」(30代旅行者) 「中東だと思って警戒して入国したら、女性たちがファッショナブルに街を闊歩し、お酒も普通に飲めることに驚いた。アジアでも中東でも西欧でもない、唯一無二の異国情緒がある」(20代バックパッカー)
このように、訪れる街や触れ合う階層によって「ヨーロッパ」にも「アジア」にも「中東」にも顔を変える多面性こそが、この国の最大の魅力であり、同時に分類を難しくしている根本原因です。