多くの利用者が「神保町駅構内図を見ても直感的に位置関係が掴めない」と口を揃えます。東京都交通局および東京メトロの公開図面や構内図を精査すると、この駅が抱える空間構造の特殊性が浮き彫りになります。神保町駅は、単に3路線が同一平面で交差しているのではなく、地下1階から地下4階にかけて異なる時代に建設されたトンネルが立体的に積み重なった構造をしているためです。
歴史を紐解くと、1972年に都営三田線(地下1階改札・地下2階ホーム)が開業し、1980年に都営新宿線(地下3階ホーム)、そして1989年に東京メトロ半蔵門線(地下4階ホーム)が乗り入れました。白山通りの直下を南北に貫く三田線に対し、靖国通りの直下を東西に走る新宿線と半蔵門線が上下に重なり合う形で交差しています。深さにして約20メートル以上の高低差があり、改札階とホームを結ぶ動線がフロアごとにズレて配置されていることが、視覚的な混乱を引き起こす元凶です。
現場を歩くと痛感するのが、「改札口とホームの空間的ねじれ」です。例えば、半蔵門線のホームから新宿線へ向かう際、案内板の矢印を追うと一度別の路線の連絡通路を経由させられる感覚に陥ります。さらに、白山通り側と靖国通り側で改札外コンコースが分断されている箇所があり、「一度改札を出てしまうと地下通路だけで目的の出口へ行けないトラップ」が存在します。この立体的断絶こそが、来訪者の認知地図(メンタルマップ)を狂わせる決定的な要因となっています。