1960年代末、デトロイトからロサンゼルスへと拠点を移しつつあったモータウンレコードは、大きな転換期を迎えていました。看板スターだったスプリームスからダイアナ・ロスが独立する過渡期において、創業者のベリー・ゴーディJr.は、レーベルの未来を担う新たな起爆剤を渇望していたのです。そこにインディアナ州ゲーリーから現れたのが、ジャクソン兄弟の類まれなる才能でした。
ゴーディJr.がこのプロジェクトに注いだ執念は尋常ではありませんでした。従来の外部作家に頼るシステムではなく、自らを中心に、アレンジャーのジーン・マルチェリーノ、作詞作曲家のフレディ・ペレン、アルフォンソ・ミゼル、ディーク・リチャーズを集結させ、匿名の制作集団「ザ・コーポレーション」を結成したのです。個々の作家のエゴを排除し、完全なチームプレイでヒットを生み出すための社運を賭けた体制でした。
楽曲制作の経緯を調査すると、興味深い事実が浮かび上がります。当初この曲は『I Wanna Be Free』というタイトルで、グラディス・ナイトやダイアナ・ロスへの提供を想定して試作されていました。しかし、ゴーディJr.がマイケルの破格のボーカルポテンシャルを目の当たりにした瞬間、構想は劇的な変更を遂げます。キーを引き上げ、テンポを跳ねさせ、幼い少年が歌うからこそ爆発的なエネルギーを放つファンキーなバブルガム・ソウルへと完全に再構築されたのです。