手足口病を発症した患者が直面する最大の苦痛は、高熱や手足の皮疹以上に、嚥下(えんげ)の瞬間に走る電撃的な咽頭痛です。患者の多くが「唾液を飲み込むことすら恐怖」と口を揃える背景には、ウイルスが咽頭粘膜を標的にして引き起こす局所的な組織破壊があります。
コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルス71型が軟口蓋、口蓋弓、扁桃周囲の粘膜上皮細胞に感染すると、局所的に強い炎症反応が生じ、直径2〜3ミリメートルの小水疱が多発します。この水疱は極めて破れやすく、発症から1〜2日以内に破裂して浅い潰瘍(アフタ)へと移行します。咽頭の後方は飲食物だけでなく、自身の唾液が1日に1〜1.5リットルも通過する部位です。神経終末が剥き出しになった開放創に、酸や塩分を含んだ唾液が触れるたび、脳へダイレクトに激痛シグナルが送られます。
臨床データによると、喉の痛みのピークは発症から2〜4日目に訪れます。初期の発熱(37〜38度台)が解熱した直後、水疱が一斉に潰れて潰瘍化する時期と完全に一致します。患者や保護者が「熱が下がったのに痛みが悪化している」と狼狽するケースが多いのはこのためです。
この激痛は一体いつまで続くのか。粘膜組織のターンオーバーに伴い、潰瘍の表面が肉芽組織と新たな上皮で覆われるまでには通常5〜7日間を要します。発症後5日を過ぎると痛みの角が取れはじめ、7日目には固形物を口にできるレベルまで回復するのが典型的な経過です。ただし、潰瘍が喉の奥深くに集中した場合や二次感染を併発した場合は、違和感や軽度の痛みが10日前後残存することもあります。