手足口病は、例年6月下旬から7月中旬にかけてピークを迎える季節性ウイルス感染症と位置づけられてきました。しかし、国立感染症研究所および小児科医療機関の臨床データによると、2026年の流行状況は初春から晩秋、さらには初冬に至るまで散発的な集団感染が継続する「通年化」の様相を呈しています。従来の典型的な夏型パターンが崩れた背景には、暖冬傾向によるウイルスの越冬と、保育施設における高密度な集団保育環境が関係していると専門家は指摘します。
手足口病を引き起こす病原体は単一ではありません。主にコクサッキーウイルスA16(CA16)やエンテロウイルス71(EV71)、さらに近年大きな水疱や重篤な皮膚症状を引き起こすコクサッキーウイルスA6(CA6)などが主因です。複数の血清型が存在するため、「昨年かかったから今年はかからない」という終生免疫は成立せず、ワンシーズンに2回以上罹患する幼児も珍しくありません。
手足口病の潜伏期間と初期症状の見落としやすい兆候
感染の端緒となる手足口病の潜伏期間は通常3〜5日(極端な場合は2〜7日)です。この無症状の潜伏期間中から、すでに咽頭内でのウイルス増殖は始まっています。
見逃されやすいのが初期症状の出方です。多くの場合、最初に現れるのは37度台半ばから38度前後の微熱、喉の違和感、そして機嫌の悪さです。厚生労働省の公式資料でも「発熱は約3分の1の患者に見られる程度で、高熱が続くことは稀」とされていますが、現場では「発熱しないまま、突然よだれが急増した」「食事を口に入れた瞬間に激しく泣き叫んだ」という保護者の証言が目立ちます。口腔粘膜や舌に痛みを伴う口内炎(アフタ)が先行して出現するため、手足の発疹が出る前の段階で食事や水分を拒否し始めます。この初期段階からすでに強い飛沫感染力が生じている点に注意しなければなりません。