インスタレーションが誕生した背景には、20世紀美術における「作品の物質性や商品化への疑問」と「表現領域の拡張」という大きな歴史的うねりがあります。
1910年代、マルセル・デュシャンが男性用小便器をそのまま展示した『泉』を発表し、「作家の手で作られた美」から「作家が選んだ概念(コンセプト)」へと美術の定義を揺るがしました。その後、1960年代から1970年代にかけて、美術館の商業主義的なシステムに対抗する形で、ハプニング(前衛劇)、ミニマリズム、コンセプチュアル・アート、大地そのものをキャンバスにするランド・アートなどが台頭します。
作家たちは「売買可能なキャンバスやブロンズ像を作るのではなく、観客がその場でしか味わえない知覚体験や空間そのものを提示したい」と考えるようになりました。1970年代後半から1980年代にかけて「インスタレーション」という呼称が美術批評界で定着し、1990年代以降は国際展(ヴェネツィア・ビエンナーレなど)において現代アートの主流形式へと確固たる地位を築いたのです。