入野自由さんがハク役に選ばれたのは、2001年公開の映画『千と千尋の神隠し』の制作期でした。1988年2月19日生まれの入野さんは、アフレコ当時わずか13歳の中学2年生。すでに4歳で劇団ひまわりに入団し、子役として舞台やドラマに出演していたものの、アニメーション映画のメインキャストとしてはほぼ無名の存在でした。
当時開催されたオーディションで、スタジオジブリおよび宮崎駿監督が最も重視したのは「作られた大人の声ではなく、少年だけが持つリアルな透明感と気品」でした。当時の特番インタビューや制作関係者の証言によると、入野さんはオーディション現場で過度な演技を作ることなく、素朴かつ凛とした発声を見せ、宮崎監督の心を一瞬で掴んだと伝えられています。
収録現場では、宮崎監督から「もっと感情を削ぎ落として、千尋を見守る神聖な存在として語りかけてほしい」といった徹底した直接指導が行われました。主人公・千尋役を演じた柊瑠美さんも当時14歳の中学2年生であり、同世代の2人がスタジオで生み出した掛け合いは、計算された大人の芝居では決して出せない、奇跡的な純度の高さを作品にもたらしました。