文字数をめぐる議論の中で、まことしやかに語られるネット上の都市伝説についても検証が必要です。
代表的な誤解が「ひらがなだけの苗字は存在しない」という言説です。明治8年(1875年)の平民苗字必称義務令によってすべての国民が姓を名乗ることになった際、役場の戸籍官吏が誤って仮名で記録した例や、奄美・沖縄地域における独自の歴史的経緯、さらには戦後の帰化手続きなどの過程で、苗字ひらがな表記の戸籍登録(例:「ひらが」「つかもと」など)が極めてわずかながら実在しています。下の名前だけでなく、苗字においてもひらがな単独の戸籍は違法ではなく、法的に成立し得ます。
また、ネット掲示板などで「日本一長い苗字」として流布されている「阿比留文字(あひるもじ)を用いた架空の長大姓」や、創作落語のような長文苗字は、公的な住民基本台帳法や戸籍法の調査によって実在が否定されています。名字研究家や法政大学等の研究チームによる戸籍調査でも、実在が証明されている上限はあくまで「漢字5文字」にとどまります。