物理学において、熱とエネルギーの振る舞いを支配する法則にはいくつかの段階が存在します。学校の授業や科学ニュースで誰もが耳にするのが「熱力学第一法則」と「熱力学第二法則」ですが、両者の役割は根本的に異なります。
熱力学第一法則は、別名「エネルギー保存の法則」です。運動エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなど、形が変わっても空間内に存在するエネルギーの総和は常に一定に保たれるという事実を保証します。しかし、第一法則には決定的な盲点がありました。「現象がどの方向に進むのか」という時間の矢を規定していない点です。
たとえば、1杯の熱いお湯を部屋に放置すると、熱が周囲の空気に逃げてぬるま湯になります。このとき、お湯が失った熱量と空気が受け取った熱量は完全に等しく、第一法則を満たしています。しかし、逆にお部屋の空気から熱が集まって、ぬるま湯が勝手に沸騰し始める現象は絶対に起きません。この「一方通行の不可逆な変化」を縛る決定的なルールこそが熱力学第二法則です。