ヨルシカの『雨とカプチーノ』を深く読み解く上で欠かせないのが、前作アルバム『だから僕は音楽を辞めた』の主人公・エイミーと、本作『エルマ』の主人公である少女・エルマの二者関係です。音楽を辞め、自らの命を絶つ旅に出たエイミーがエルマに遺した手紙と写真。それらを頼りにエイミーが辿ったヨーロッパの地を巡るエルマの旅路こそが、アルバム『エルマ』の骨格を成しています。
作中において『雨とカプチーノ』は、スウェーデンのゴットランド島・ヴィスビューを訪れたエルマの視点から描かれます。カフェのテラスで雨宿りをしながら注文したカプチーノを見つめるエルマ。歌詞に登場する「カプチーノの泡」は、時間の経過とともに消え去ってしまうエイミーとの記憶や感情の儚さのメタファーとして機能しています。
「思い出せなくなる」という恐怖と、「忘れてしまいたい」という防衛本能。この相反する二つの感情が、淡々とした街の描写とともに歌い上げられます。「花惑い」や「盲目」といった視覚を制限する言葉の数々は、かつてエイミーが見ていた景色の真意を掴みきれないエルマの焦燥感と孤独を如実に物語っています。