「与那国島から本当に台湾が肉眼で見えるのか?」という疑問は、西崎を訪れる旅行者が最も熱心に抱くロマンの一つです。結論から言えば、台湾の島影は条件さえ揃えばはっきりと肉眼で確認できます。しかし、いつでも誰でも見られるわけではありません。
与那国島西崎から台湾東海岸(宜蘭県・花蓮県方面)までの直線距離は約111km。東京から富士山頂までの直線距離(約100km)とほぼ同等です。台湾島には標高3,000mを超える中央山脈が連なっており、地球の丸みによる水平線の沈み込みを計算に入れても、山頂部は水平線上に堂々と顔を出します。しかし、肉眼で捉えることができるのは年間を通じて10日〜15日程度(確率にして数パーセント)という極めて稀少な現象です。
現地気象データおよび島民の長年の観察記録から導き出された「台湾視認の3大条件」は以下の通りです。
- 条件1:台風通過直後の大気浄化(夏〜秋):台風が通過して湿気と浮遊塵(PM2.5や砂塵)が一気に吹き飛ばされ、大気の透明度が極限まで高まった翌日・翌々日の早朝や夕方。
- 条件2:冬季の冷涼な大陸高気圧下(12月〜2月):澄んだ北風が吹き込み、湿度低下によって水平線付近のもや(ヘイズ)が消失している快晴時。
- 条件3:日没前後の逆光シルエット(トワイライトタイム):夕日が台湾の背後に沈む時間帯、逆光のコントラストによって山並みの輪郭が鮮明な黒い影として浮かび上がるマジックアワー。
島民の手記や常連の旅人の証言によると、「昼間は全く何も見えなかった海の彼方に、夕暮れ時になると突然ノコギリの刃のような山影が巨大な壁となって現れる」瞬間があるといいます。双眼鏡や望遠レンズ(300mm以上)を持参すると、肉眼ではかすかな稜線がより鮮明な山塊として確認可能です。