物語のクライマックスで訪れる最大の衝撃が、主人公・小坂れい(間宮祥太朗)の唐突な死です。「殺す」が口癖で周囲を威嚇していた小坂は、リストカット常習者で「死にたい」を繰り返す鹿野なな(桜井日奈子)と出会い、互いの孤独を埋め合うなかで少しずつ生きる希望を見出していました。しかし、そのささやかな幸福はあまりにも理不尽な形で断ち切られます。
小坂の直接的な死因は、通り魔による無差別刺殺です。鹿野のために買い出しへ出かけた日常の延長線上で、彼は命を奪われました。この結末に対して「なぜ小坂が死ななければならなかったのか」とショックを受ける観客は少なくありません。しかし、作品を丹念に見返すと、小林啓一監督が周到に仕掛けた伏線の存在が浮かび上がってきます。
劇中では、背景のテレビニュースで「近隣での通り魔事件の発生」が小さく報じられているほか、登場人物たちが日常を過ごす街の片隅に不穏なサイレンの音が響く場面が複数回登場します。さらに、小坂が刺される直前の街の空気感や、何気ないカットの繋ぎ方にも緊張感が漂っていました。本作が描いているのは「予期せぬ死は誰の身にも等しく、理不尽に突然訪れる」という世界の残酷なリアリティです。小坂の死は単なるお涙頂戴のギミックではなく、日常のかけがえのなさを際立たせるための必然的な構造として配置されています。