ウェブ検索やSNSを開くと、「この軟膏を塗ったら顔のブツブツが平らになった」「ドラッグストアで買える市販薬で消えた」といった魅力的な文言が目に飛び込んできます。しかし、取材に応じた皮膚科専門医らは口を揃えて「市販薬の塗布によって脂腺増殖症が完治することは医学的にあり得ない」と断言します。こうしたネットの噂の真相を探ると、疾患の混同と一時的な視覚的変化が誤った情報として拡散されている構図が浮かび上がってきます。
脂腺増殖症は、毛穴に付属する皮脂腺の小葉が異常に増殖し、真皮層から表皮を押し上げるようにして形成される良性の皮膚病変です。中心部に特徴的な陥凹(おへそのようなへこみ)を持ち、黄色から肌色の1ミリから数ミリ程度の盛り上がりを見せます。これに対し、市販のニキビ治療薬(抗炎症成分や殺菌成分を含む外用薬)や角質軟化剤は、表皮最外層の角質層や毛穴周辺のアクネ菌に対して作用する設計になっています。
市販薬を塗ることで周囲の赤みが引き、一時的にブツブツが目立たなくなったように見えるケースは存在します。しかし、それは表面の炎症が沈静化したに過ぎず、真皮層深部で塊状に肥大化した皮脂腺組織そのものには何ら影響を与えていません。脂腺増殖症の治らない理由の根本は、病変の首座が外用薬の浸透し得ない深い層(真皮浅層から中層)に強固に居座っている点にあります。市販薬を何本消費しようとも、根本的な病変組織を消失させることは不可能なのです。