ネット上の情報や個人の体験談には、税務上の取り扱いを取り違えた誤解が少なくありません。特に注意すべき2つの盲点を整理します。
第1の盲点は、「健康診断に伴う交通費」に関する誤認です。通常の傷病治療であれば、病院へ通うための電車代やバス代などの公共交通機関運賃は医療費控除の対象となります。しかし、医療費控除における健康診断の交通費は、たとえ健診の結果として重大な病気が見つかり治療へ移行したとしても、受診そのものの移動費は対象外と判断されるケースが一般的です。移動目的が「治療のための通院」ではなく、あくまで「健康診断の受診」であったとみなされるためです。
第2の盲点は、医療費控除の対象外項目として見落とされがちな「会社健診の自費オプション」です。労働安全衛生法に基づいて事業主が全額負担する定期健康診断に対し、従業員が任意で数千円から1万円程度を追加して受診するオプション検査(腫瘍マーカー、婦人科検診、腹部エコーなど)があります。会社 健康診断の自費負担分であっても、受診動機が自己予防である限り、そのままでは控除できません。
さらに、通常の医療費控除が使えない場合でも、「セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の特例)」の適用トリガーとして健康診断を活用できる点は重要な知見です。この特例を利用するためには、申告者が特定健康診査や職場の定期健診など「一定の取組」を行っていることが必須条件となります。その際、セルフメディケーション税制における健康診断の提出書類として、受診を証明する「結果通知書」や「領収書(受診証明の記載があるもの)」が必要となります。本則の医療費控除が使えないときは、市販薬の控除制度へ切り替える視点が欠かせません。