カーエアコンの構造は、家庭用エアコンや冷蔵庫と同じく「冷媒ガスが気化と液化を繰り返す過程で周囲の熱を奪う(気化熱)」仕組みを利用しています。エンジンルーム内に配置されたコンプレッサー(圧縮機)、コンデンサー(凝縮器)、レシーバー(乾燥・気液分離器)、そして車内奥深くにあるエバポレーター(蒸発器)が配管で結ばれ、密閉された回路内を冷媒が循環しています。
現場の整備士が解説する診断フローによると、トラブルが発生した際はまず「風そのものが出ていないのか」、それとも「風は出るが冷たくないのか」という2つの分岐から診断をスタートさせます。
送風自体が完全に停止している場合、冷媒回路ではなく「ブロアファンモーターの故障」や「ブロアファン用ヒューズの断線」、あるいは風量調整スイッチの基盤不良が疑われます。この場合、車内に風を送り出す扇風機の役割が停止しているため、いくら冷却機能が生きていても冷気は届きません。
一方、送風は勢いよく出るものの車のエアコンぬるい風が出る理由として最も頻度が高いのが、冷媒回路のトラブルです。走行時の振動や経年劣化によって配管の接続部(Oリング)から冷媒が徐々に抜け、規定量を下回ると熱交換が正常に行われなくなります。取材に応じたベテランメカニックは、「冷媒が完全に抜けきると送風温度は外気温と全く同じになり、真夏にはヒーターをつけているかのような熱風に感じられる」と証言しています。これがまさに、車のエアコンが冷えない原因の大半を占める冷媒不足の実情です。