胃腸の粘膜が炎症を起こしているとき、消化管に最も求めてはいけないものが「消化の負担」です。胃カメラや大腸内視鏡検査を手掛ける専門医への取材によると、胃内で消化にかかる平均滞留時間は、糖質主体の柔らかい炭水化物で約1.5時間〜2時間であるのに対し、脂質の多い肉類や揚げ物では4時間から6時間以上に及びます。胃腸が弱っている間は、この滞留時間を最小限に抑えることが最優先課題となります。
消化器官に余計な蠕動(ぜんどう)運動を強いないための食事分類として、医療現場で実際に推奨されている主要食品は以下の通りです。
まず主食としては、精白米を使ったおかゆや雑炊、柔らかく煮込んだ温かいうどん、にゅうめんが筆頭に挙げられます。これらは適度な炭水化物と微量の良質な水分を含み、胃酸の過剰分泌を招くことなく素早くエネルギー源へと変換されます。パンを選ぶ場合も、バターや油分が練り込まれたクロワッサンやデニッシュは厳禁であり、柔らかい白い食パンをトーストせずにそのまま食べるか、パン粥にするのが安全です。
次にタンパク質源(主菜)では、絹ごし豆腐、温泉卵、茶碗蒸し、鶏ささみや皮なし胸肉(蒸し・茹で)、鱈(タラ)やカレイなどの白身魚が最適解です。木綿豆腐よりも水分含有率の高い絹ごし豆腐は胃壁への機械的刺激が少なく、温泉卵や半熟卵は生卵や固ゆで卵に比べて胃内滞留時間が極めて短いという生化学的データが存在します。
野菜類においては、繊維質の硬い根菜や生野菜を完全に避け、大根、白菜、キャベツ、ほうれん草の葉先などを煮浸しやスープにして柔らかくなるまで火を通す調理法が基本です。特にもずくや昆布といった海藻類、オクラに含まれる水溶性食物繊維は、腸内の炎症を和らげる働きが確認されていますが、急性期の激しい下痢症状がある間は海藻すら控え、まずは大根やキャベツの煮汁から栄養を摂取するのが回復への近道となります。