介護認定は、認定調査員の聞き取り結果(一次判定)だけで決まるわけではありません。市町村の介護認定審査会(二次判定)において、調査票と同等、あるいはそれ以上の決定権を持つのが医師による「主治医意見書」です。しかし、この意見書を巡る失敗が極めて頻発しています。
典型的な失敗は、主治医意見書の依頼手順を漫然と行政任せにしてしまうことです。通常、申請書類を提出すると自治体から指定した医療機関へ直接意見書の作成依頼書が郵送されます。多くの家族は「先生がうまく書いてくれるだろう」と放置しますが、ここに重大な盲点があります。
内科や循環器科などの主治医は、高血圧や糖尿病の数値を診るプロであっても、患者の家庭内での認知症症状を把握しているとは限りません。診察室でのわずか3〜5分の会話で、本人が「先生、体調はすこぶる順調です」と笑顔で応対していれば、医師はカルテに「病状安定、認知機能低下なし」と記載してしまうのです。その結果、主治医意見書の認知症高齢者の日常生活自立度が「ランクI(何らかの認知症を有するが、日常生活はほぼ自立)」と判定され、一次判定が重くても審査会で要支援へと押し下げられてしまいます。
これを防ぐためには、申請手続きを行う直前に、家族が主治医の外来を単独で受診するか、事前相談のアポイントを取り、医師に直接「生活の生々しい実態」をインプットしなければなりません。
- 「家の中で物盗られ妄想があり、財布を隠して警察を呼ぼうとする」
- 「薬の管理が全くできず、1日分を一度に全部飲んでしまう」
- 「夜中に何度も起きて冷蔵庫の生肉を食べてしまう」
上記のように、「医学的処置」ではなく「生活管理・見守りの必要性」を箇条書きにしたペーパーを医師に手渡すことが不可欠です。医師側も、具体的な情報提供があれば意見書の「特記すべき事項」欄に強い根拠を記載しやすくなり、結果として実態に即した要介護認定へとつながります。