事態が大きく動いたのは2008年のことでした。キクチ氏が開設した公式ブログに数千件規模の誹謗中傷や脅迫コメントが殺到。身の危険を強く感じたキクチ氏は、警視庁中野警察署へ必死の思いで相談を持ち込みます。そこで出会った熱意ある捜査官が事態の異常性を重く受け止め、本格的な捜査がスタートしました。
キクチ氏自身が保存していた膨大な書き込みログとプロバイダへの情報開示請求を通じて、書き込み主の特定が進められました。そして2009年、警察は全国に散らばる投稿者男女19名を名誉毀損および脅迫の容疑で一斉に書類送検するという、日本のネット犯罪史上極めて異例の摘発に踏み切ったのです。
特定された中傷犯人たちの正体は、凶悪な犯罪集団などではなく、大学生、公務員、会社員、主婦といった「ごく普通の一般市民」でした。彼らの多くは「他の人も書いていたから」「悪人を懲らしめる正義感からやった」と供述し、罪の意識をほとんど持っていなかった事実が社会に大きな衝撃を与えました。