戦後の焼け跡から立ち上がった昭和20年代後半、出版界には粗悪な仙花紙に印刷された「カストリ雑誌」が氾濫しました。その混沌の中から1952年に本格的な商業誌として再スタートを切ったのが、伝説の雑誌『奇譚クラブ』です。
『奇譚クラブ』の歴史は、日本のサブカルチャー史そのものと言っても過言ではありません。同誌は単なる性的欲望を満たす媒体ではなく、民俗学、異常心理学、文芸、そしてアングラ写真が融合した前衛的な知の実験場でした。三島由紀夫や澁澤龍彦といった一流の文化人が愛読・寄稿していた事実も、その表現水準の高さを物語っています。誌面を飾った昭和レトロなアングラ写真は、薄暗い部屋の一角で撮影され、コントラストの強い白黒印刷によって独特の耽美的な陰翳を生み出しました。