「献上」という言葉を辞書で引くと、「主君や目上の人、神仏に品物を差し上げること」と記載されている。しかし歴史学の視点で紐解くと、この言葉の本質は単なる品物の移動にはない。最高位の相手に対する無二の敬意を表す「献上」は、同等の立場や一般的な目上の人に贈る「進上」や、日常の贈り物全般を指す「進物」とは明確な一線を画していた。
「進上」が個人間の敬意を伴う手渡しに近いニュアンスを持つのに対し、「献上」は国家の頂点や神聖不可侵な領域へのアプローチに限られていた。「進物」が贈答の物品そのものを指す名詞であるのに対し、「献上」はその関係性と行為の格調の高さを定義する概念である。この違いを理解することは、日本人が長年培ってきた贈答マナーの根底にある畏怖と敬意のバランス感覚を知る手懸かりとなる。