過剰な競争に晒される現代の歯科医療業界では、自費診療による収益確保を優先するあまり、リスク管理やスタッフ教育が後回しにされる歪みが生じている。保険診療の報酬改定が厳しさを増す中、安易に難易度の高い外科施術へ参入する歯科医院が増加しているのだ。
監督官庁である厚生労働省や業界団体である一般社団法人日本歯科医師会はガバナンス強化を叫ぶものの、個々の開業医に対する強制力のある実地監査は限定的だ。2015年に施行された医療事故調査制度も、死亡事例を中心とした運用にとどまり、重度の神経障害や長引く後遺症事故の多くは調査の対象外となっている。公的な網の目をすり抜けたトラブルが、患者個人へ重くのしかかる構造は今なお解消されていない。