彼の演技キャリアにおいて決定的な転機となったのが、映画『去年の冬、きみと別れ』である。狂気と純愛が入り混じる複雑な主人公を演じきり、観客だけでなく映画批評家たちをも唸らせた。それまでの甘いマスクというパブリックイメージを鮮やかに裏切り、予測不能なサスペンス映画の重厚な世界観に見事に溶け込んでみせたのだ。
「あの作品で自分の殻を破ることができた」と本人が振り返るように、内面にドロリとした闇を抱えた人物の深層心理を掘り下げるアプローチは、現在の彼の演技の基礎を形作った。底知れぬ影を宿した瞳の演技は、サスペンスというジャンルにおいて彼だけの唯一無二の武器となっている。