パトリス・ジュリアン氏の歩んできた経歴は非常にユニークです。モロッコで生まれ、フランスで育った彼は、フランス大使館の文化アタッシェ(外交官)として1980年代後半に来日しました。外交の最前線で日仏文化の橋渡し役を務めた後、1990年代初頭に退官し、作家・ライフスタイル提案者としての道を歩み始めます。
その名を日本全国に知らしめたのが、1995年に刊行された代表作『生活はアート』でした。バブル崩壊後の日本において、高価なブランド品に頼るのではなく「一杯の紅茶を丁寧に淹れること」「部屋に一輪の花を飾ること」「日々の家事を楽しむこと」の中にこそ本物の豊かさがあるというメッセージは、多くの日本人に深い衝撃と癒やしを与えました。
彼が提案するシンプルで美しいライフスタイルは、後の「丁寧な暮らし」ブームやカフェカルチャーの源流となり、エッセイやレシピ集などの関連本は軒並みベストセラーを記録しました。