ゴキブリを一網打尽にしようと、家庭用の燻煙剤(バルサンやアースレッドなど)を車内で焚こうと考えるドライバーがいますが、これは「車両故障」「火災」「健康被害」のトリプルリスクを招く絶対に避けるべき愚行です。
第1のリスクは、現代の自動車に張り巡らされた電子制御ユニット(ECU)や車載センサー、カーナビゲーション基板への致命的なダメージです。燻煙剤から噴出される微粒子や有効成分には腐食性や粘着性を持つものがあり、電子基板に付着することで絶縁不良やショートを引き起こす危険性があります。最悪の場合、数十万円から100万円を超える電装系交換費用が発生します。
第2のリスクは、シート素材やエアコン流路への薬剤残留です。布製シートや本革シート、天井の内張りに殺虫成分が強力に沈着し、日光による高温で揮発し続けます。これにより、密閉空間に乗車した乗員、とりわけ乳幼児やペットが薬剤を吸入し、アレルギー反応や化学物質過敏症、急性中毒症状を引き起こす危険性が極めて高いのです。
さらに、引火性のあるエアゾール式スプレーを炎天下の車内に放置することは論外です。真夏の車内温度は容易に70℃以上に達し、ダッシュボード付近は80℃近くまで上昇します。スプレー缶の内圧が異常上昇して破裂・爆発し、フロントガラスを吹き飛ばしたり車内を大破させたりする重大事故が毎年JAFや消防庁から報告されています。
車内という特殊環境下で推奨される駆除剤は、「マイナス40℃前後の冷撃凍殺スプレー(無毒性・引火防止処方)」、あるいは局所的に配置する「ブラックキャップ等のベイト剤(毒餌剤)」です。ベイト剤を使用する場合は、薬剤が車内の高温で溶け出さないよう耐熱仕様のものを選び、運転操作の邪魔にならないシート下の奥深くに両面テープで確実に固定してください。