整形外科や在宅医療の現場では、「腰に4枚、両膝に2枚ずつ、肩に2枚」と一度に8〜10枚近くの湿布を全身に貼っている高齢の患者が珍しくありません。「湿布くらいで薬の過剰摂取(オーバードーズ)になるはずがない」という心理的油断が背景にあります。
しかし、加齢とともに腎臓の糸球体濾過量(eGFR)は自然に低下しており、高齢者の薬物代謝能力は若年層に比べて半減していることも珍しくありません。腎機能が衰えている状態で複数の強力なテープ剤を全身に貼ると、体内の薬剤クリアランスが追いつかず、血中濃度が危険水準まで上昇します。
実際に、原因不明の食欲不振や急激な貧血症状で救急搬送された高齢者が、検査の結果、広範囲に及ぶ胃潰瘍からの持続出血と診断され、その背景に「毎日10枚以上の湿布貼付」があったという症例は医療学会でも多数報告されています。痛みの緩和を求めるあまり、自ら生命の危機を招いてしまう悪循環を断ち切る啓発が急務となっています。