ネット上のQ&AやSNSでは、「セメントはモルタルよりも高純度だから、セメントだけで施工した方が頑丈になるのではないか」という誤った言説が散見されます。しかし、これは建築工学的に完全な誤解です。
セメント粉末に水だけを加えたものを「セメントペースト」と呼びますが、セメントペーストは水和反応に伴う体積収縮が非常に大きく、硬化する過程で自ら引き裂かれるように無数のクラックを発生させます。骨材である砂が混ざっているからこそ、砂の粒子同士が突っ張り棒の役目を果たし、収縮による変形とひび割れを物理的に食い止めることができるのです。
また、「水をたくさん入れて柔らかくした方が隙間に入りやすく、綺麗に平らになる」というのも危険な誤解です。水分量が多すぎるモルタルは、硬化後に余剰水が蒸発して無数の微細な空洞(ポーラス)を残し、圧縮強度が本来の半分以下まで低下します。さらに、内部のカルシウム成分が表面に溶け出して白く結晶化する「白華現象(エフロレッセンス)」を引き起こし、美観を著しく損ねる原因となります。