つぶ貝を調理する上で絶対に避けて通れないのが、唾液腺に含まれる毒素「テトラミン(Tetramine)」の存在です。厚生労働省や各自治体の保健所が定期的に注意喚起を行っている通り、知識を持たずに丸ごと煮込んで摂取すると重篤な食中毒を引き起こすリスクがあります。
テトラミンを摂取した場合、食後30分から数時間以内に激しいめまい、頭痛、ふらつき、視覚異常(目がかすむ、物が二重に見える)、酩酊感といった神経症状が現れます。死亡例は極めて稀であるものの、歩行困難や激しい吐き気を伴うため極めて危険です。
最大の落とし穴は、「テトラミンは熱に極めて強く、加熱調理しても一切無毒化されない」という点です。どれほど長時間煮込んでも毒素は煮汁に溶け出すだけで分解されないため、調理前に物理的に唾液腺を取り除く「アブラの取り方」をマスターすることが唯一の予防策となります。
失敗しないアブラ(唾液腺)の除去手順
特にヒメエゾボラ(青つぶ)やエゾボラ(真つぶ)を扱う際は、以下の手順で確実にアブラを除去してください。
- 身の引き抜き:殻付きの場合は貝殻の隙間に千枚通しや竹串を刺し、身を回しながらゆっくり引き抜く。
- 内臓の処理:ワタ(肝)と身を切り分ける。※肝自体にはテトラミンは含まれませんが、鮮度や好みに応じて選別します。
- 身の縦割り:足(可食部の筋肉)の中央に縦に深く包丁を入れて左右に開く。
- 唾液腺の摘出:開いた筋肉の奥にある、左右一対の淡黄色〜乳白色をした米粒〜豆粒大の塊(アブラ)を手や包丁の先で完全につまみ出して破棄する。
- 塩もみとぬめり取り:唾液腺を取り除いた後、粗塩を振って揉み込み、流水でぬめりと残存した分泌物を綺麗に洗い流す。