『ワンパンマン』という作品を実写映画化するにあたり、制作陣が直面する最大の壁は「どんな強敵もワンパン(一撃)で倒してしまう」というプロットそのものにあります。
ハリウッドの伝統的な三幕構成(発端・展開・結末)では、主人公が強大な敵に敗北や挫折を味わい、修行や葛藤を経て勝利するというカタルシスが基本原則です。しかし、サイタマは物語の開始時点で既に最強であり、成長の余地がありません。敵がどれほど脅威を誇示しても、最終的に一撃で終わるというフォーマットを2時間の長編映画で成立させるには、並大抵の構成力では通用しないのです。
ネット上では「アクションシーンのCG制作が難航しているから遅れている」という説が散見されますが、本質的なボトルネックは「ワンパンで終わるギャグと、映画としてのドラマ的緊張感をいかに両立させるか」という脚本の構造的課題にありました。だからこそ、風刺劇とSFアクションの構造破壊に定評のあるダン・ハーモンらの招聘が必要不可欠だったと言えます。