甲羅の周辺には、正しく理解していないと健康被害や風味の劣化を招く落とし穴が存在します。代表的な事例が「絶対に食べてはいけない部位」の存在と、甲羅の変色トラブルです。
蟹の甲羅をパカッと外した際、左右に並んでいる灰色がかった三角錐状のビラビラした組織を目撃するはずです。これは通称「ガニ」と呼ばれるエラ(呼吸器官)です。昔から「ガニには毒がある」と噂されてきましたが、フグのような神経毒が存在するわけではありません。しかし、ガニは海中の泥やプランクトンの死骸、雑菌を絶えずろ過するフィルターの役割を果たしており、非常に不衛生で苦味が強く、消化不良や激しい下痢を引き起こす原因になります。下処理の段階で確実にハサミで切り落とし、絶対に口に運ばないよう徹底してください。
また、冷凍蟹を解凍した際や冷蔵保存中に甲羅や足の関節が黒ずんでくる現象は「黒変(メラノーシス)」と呼ばれます。これは蟹の体液に含まれるアミノ酸(チロシン)が酸化酵素の働きでメラニン色素に変化する自然現象であり、腐敗やカビではありません。見た目は損なわれますが、異臭がなければ加熱して食べても安全性に問題はありません。一方で、白く毛羽立った付着物や酸っぱい刺激臭、糸を引くようなヌメリを伴う場合は真正のカビや細菌繁殖による腐敗であるため、直ちに廃棄する必要があります。