医療現場のカルテや患者の手記、SNS上のコミュニティにおける闘病記録を検証すると、ばち状指を発端とする患者行動には「痛みの欠如による発見の遅れ」という共通の落とし穴が存在します。
「半年前から指先が丸くなっていたが、単なる太り過ぎや加齢だと思い込んでいた」「家族に『指先が太鼓のバチみたいになっている』と指摘されて初めて違和感を自覚した」という証言は枚挙にいとまがありません。中には、ネイルサロンの施術者から爪のカーブの異常を指摘され、呼吸器内科を受診したところステージIIIの肺腺がんが判明したという実例も報告されています。
整形外科や皮膚科の病気と異なり、ばち状指そのものは激しい痛みや炎症を伴いません。この「無痛の変形」こそが、人間の正常性バイアス(自分は大丈夫だと思い込む心理傾向)を刺激し、受診行動を数ヶ月から1年以上遅らせてしまう最大の障壁となっています。