SNSや美容系掲示板で広く拡散されている情報の中に、「ニキビを潰したらキズパワーパッドを小さく切って貼れば最速で治る」という言説があります。しかし、ここには皮膚科学的に見逃せない重大な落とし穴が存在します。
ニキビの主因であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)は、酸素を嫌う「嫌気性菌(けんきせいきん)」です。一般的な擦り傷や切り傷とは異なり、ニキビの芯や感染巣が深部に残った状態でハイドロコロイド素材で完全密閉してしまうと、酸素が遮断された最高の増殖環境を提供することになります。
その結果、パッチの下で細菌が爆発的に増え、翌朝剥がしたら前日よりも赤く腫れ上がり、激しい痛みを伴う蜂窩織炎(ほうかしきえん)様の大炎症に発展する事故が相次いで報告されています。
キズパワーパッドを含むハイドロコロイド製剤をニキビ患部に使用してよいのは、「膿が完全に排出され、感染症状(熱感やズキズキする強い痛み)がなく、純粋な擦過傷(生傷)と同等になった段階」に限定されます。まだ内部が硬く赤く腫れている場合は、密閉パッチではなく、通気性のある抗炎症外用薬やワセリン塗布による保護を選択するのが鉄則です。