シュークリームの起源は、16世紀のヨーロッパ宮廷文化にまで遡ります。
1533年、イタリア・フィレンツェのメディチ家からフランス王室のアンリ2世へ嫁いだカトリーヌ・ド・メディシス。彼女が自国の料理人や菓子職人を伴って輿入れしたことで、フランスの宮廷料理は劇的な進化を遂げました。このとき同行した菓子職人パンタネッリ(Pantanelli)が考案した温熱生地「パート・ア・ショ(pâte à chaud)」が、シュー生地の原型とされています。
その後、18世紀から19世紀にかけて「近代フランス料理の祖」と称される名料理人アントナン・カレーム(Marie-Antoine Carême)の手によって改良が重ねられ、生地にカスタードクリームを詰める現在の「シュー・ア・ラ・クレーム」の形が完成しました。
日本にシュークリームが持ち込まれたのは幕末の横浜居留地でした。1860年代、フランス人パティシエのサミュエル・ピエール氏が横浜で開いた洋菓子店「横浜ユゲット」で製造されたのが日本発祥の記録とされています。明治期に入ると、1872年(明治5年)に東京・銀座の「米津風月堂」が販売を開始。当時は上流階級や華族しか口にできない最高級のハイカラ菓子でした。
一般庶民の日常的なおやつとして普及したのは、戦後の昭和20年代後半から30年代にかけてのこと。冷蔵技術の発達や洋菓子メーカーの量産体制が整ったことで、日本全国の食卓へ定着していきました。