大都市東京には国立西洋美術館や東京都現代美術館といったメガミュージアムが林立しています。その中で、駅から決して至近とは言えない赤塚の住宅地に位置する板橋区立美術館が、半世紀近くにわたり熱狂的な支持を集め続ける背景には、明確なブランディング戦略が存在します。
最大の要因は、他の公立館が手を出さなかったニッチかつ本質的な領域へいち早く特化した点です。同館のキュレーション活動は大きく2つの強烈な軸で構成されています。一つは、1981年から続くボローニャ国際絵本原画展に代表されるグラフィック・イラストレーションの領域。もう一つは、長らく正統派美術史の傍流とみなされていた「江戸狩野派」をはじめとする近世・近代日本絵画の再評価です。
美術評論家や学芸員の間では「板橋の企画展に外れなし」という評価が定着しています。巨大な箱モノ行政による海外有名コレクションの巡回頼みではなく、独自の研究成果を世に問う手作りの図録や展示構成が、目の肥えたファンを惹きつけて離さない本質的な原動力となっています。