シンチバック(英語圏では「Buckle Back」または「Cinch」)は、ベルトループが普及する以前の19世紀後半から20世紀前半にかけて、ウエストのフィット感を微調整するために考案された伝統的なアジャスターです。現代のファッションにおいて採用されるバックルは、歴史的再現度や安全基準の違いによって大きく3つの構造に分類されます。
最もクラシカルなのが、真鍮(ブラス)や鉄製のバックルに鋭利な2本の突起を備えた「針付き(2爪型)バックル」です。1930年代以前のヴィンテージモデルや、現代のハイエンドなレプリカブランド(ウエアハウス、TCBジーンズ、フリーホイーラーズなど)で徹底した時代考証のもと採用されています。針をデニム生地そのものに突き刺して摩擦抵抗で留めるため、位置の微調整が無段階で行える反面、鋭利な金属パーツが露出するリスクを伴います。
一方、1940年代以降の簡素化や現代の安全基準(PL法など)に対応して普及したのが「針なし(スライド型・コーム型)バックル」です。中央のバーに布を挟み込んで摩擦で固定するタイプや、ギザギザの突起(ヤスリ状の凹凸)で生地を噛ませるタイプが存在します。生地を傷つけないメリットがあるものの、針付きに比べると強いテンションがかかった際に滑りやすい弱点を持っています。自分が所有するジーンズやデニムジャケットがどの構造に該当するかを見極めることが、正しい通し方への第一歩となります。