なぜ「准教授」という高位の職名でありながら、不安定かつ待遇が抑えられたポジションが定着してしまったのか。その元凶は、大学の構造的な財政難と競争的資金制度の変遷にあります。
国からの基盤的な交付金が削られ続けるなか、各大学は生き残りをかけて日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業(科研費)や、科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの大型外部競争資金の獲得に奔走してきました。
近年では科研費等における直接経費からの「研究代表者・分担者の人件費支出」や「バイアウト制度」の拡充が進み、外部資金で若手・中堅研究者を特任教員として直接雇い入れる枠組みが一般化しました。しかし、この仕組みには決定的な脆弱性が潜んでいます。
- プロジェクト予算に人件費が従属:採択された外部資金の配分額が上限となるため、専任教員並みの給与テーブルを適用する余裕がそもそも存在しない。
- 昇給メカニズムの欠落:外部資金の総額は複数年計画で固定されているため、どれほど優れた学術的成果を出しても契約期間中のベースアップや定期昇給は望めない。
- 間接経費の搾取と設備格差:雇用主である大学側は間接経費(約30%)を吸い上げる一方で、特任教員に十分な実験スペースや個別研究室、専用の机すら割り当てないケースが散見される。
本来は研究に専念するための特任ポストでありながら、実質的にはプロジェクトPI(研究代表者)の実験補助や事務管理、さらには専任教員が敬遠する講義・学生指導の肩代わり要員として消費される構図が温存されています。