印刀の扱い方に慣れてくると、次に挑戦したくなるのが印材そのものの持ち手である「印鈕(鈕飾)」の加工です。平らな直頭印材(上部が四角いままの石)を自分好みの形状に彫り上げることで、世界に1つだけのオリジナル印章が完成します。
印鈕のデザインには、四角錐状に面取りしたシンプルな「覆斗鈕(ふくとぎゅう)」、かまぼこ型の「瓦鈕(がきゅう)」、古獣や龍、獅子などを精緻に彫り込む「獣鈕(じゅうぎゅう)」など多彩な種類があります。初心者が持ち手の自作に挑む場合は、幾何学的な面取りや「瓢箪(ひょうたん)」「筍(たけのこ)」などの自然物をデフォルメしたデザインから始めるのが確実です。
自作・加工の具体的な手順は以下の通りです:
ステップ1:石の選定と下書き
加工にはモース硬度2〜3程度の比較的柔らかい寿山石(じゅざんせき)や青田石(せいでんせき)、巴林石(ぱりんせき)を選びます。硬すぎる石(硬質緑蝋石など)はノコギリやヤスリが歯立ちません。印材上部の4面に油性ペンで削り落とすガイドラインを正確に下書きします。
ステップ2:金工用ノコギリと平ヤスリによる荒落とし
大きな角や不要な部分は、細目の金工用糸ノコギリで慎重に切り落とします。その後、目の粗い平ヤスリ(鉄工ヤスリ中目程度)を使い、下書きの線ギリギリまで全体の輪郭を削り出していきます。
ステップ3:印刀とデザインカッターによる細部彫刻
大まかなフォルムが整ったら、幅広の印刀(6mm〜9mm程度)や彫刻刀の平刀・丸刀を使い、曲面の丸みや鈕孔(紐を通す穴)、飾り模様を彫り込んでいきます。このときも印刀の単刀法を応用し、刃先を小刻みに動かすのがポイントです。
ステップ4:耐水ペーパーによる段階研磨と仕上げ
彫り上がった印鈕は、耐水サンドペーパーに水をつけながら、#400番 → #800番 → #1500番 → #3000番と順番に番手を上げながら磨き上げます。傷が完全に消えたら、最後に固形パラフィンワックスや高級クルミ油を極微量塗り、柔らかい布で素早く擦り込むことで、天然石特有のしっとりとした艶と滑らかな手触りが生まれます。