「湯治(とうじ)」という言葉の響きが、ここ秋保でいま劇的にアップデートされている。かつて病気療養のために温泉地に長逗留した日本古来の習慣が、現代のビジネスパーソンによるメンタルヘルスケアやクリエイティブな合宿の形へと形を変えて蘇った。
館内の一角には高速Wi-Fiと電源が完備され、平日の午前中は静かなコワーキングスペースとしても機能する。朝一番で共同浴場の熱い湯に浸かり、午前中は古民家の梁の下で集中してタスクを片付け、昼は採れたての野菜で身体を満たす。午後からは庭の木立を眺めながらアイデアを練る。
「東京のオフィスにいるときより、明らかに思考の解像度が上がる」。首都圏から月に一度は通うというIT企業役員の言葉が印象的だった。デジタルに囲まれた都市生活者が渇望する「人間らしい生のリズム」が、ここには当たり前のように流れている。