エレンを語る上で欠かせない象徴的なフレーズが「自由の奴隷」です。かつて元調査兵団のケニー・アッカーマンが「誰もが何かの奴隷だった」と遺した言葉通り、エレンは誰よりも自由を愛しながら、誰よりも「自由という概念」に支配されていました。
生まれた時から壁の外の世界を夢見、理不尽に自由を奪う者を容赦なく駆逐してきたエレン。しかし、自ら手に入れた未来視の力によって「自分が世界を平らにする未来」を知ってしまった瞬間から、彼は自らの意志で未来を選び取る自由を失いました。進撃の巨人最終回におけるエレンの選択は、一見すると彼自身の凶行に見えながら、同時に「そうするしかなかった」必然の結末でもあります。
「壁の外の現実を知ったとき、オレはガッカリした」というアルミンへの告白は、アルミンが見せてくれた「誰もいないまっさらな外の世界」という少年の日の憧憬を歪んだ形で実現してしまった自己矛盾を端的に表しています。世界を自分の理想通りの白紙に戻したいという無邪気で暴力的なエゴイズムと、友人を救いたいという純粋な献身が同居していた点に、エレンというキャラクターの深淵が存在します。