彼女のキャリアにおいて決定的な転換点となったのは、NHKの連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロイン・福来スズ子を演じきった日々だろう。戦前・戦後の激動期を歌と踊りで駆け抜けた「ブギの女王」笠置シヅ子をモデルにしたこの大役は、生半可な覚悟で務まるものではなかった。半年以上に及ぶ長丁場の撮影中、彼女は劇中で披露する圧巻のステージパフォーマンスをほぼ吹き替えなしでこなしてみせた。
画面越しに伝わってきたのは、単なる歌唱技術の巧拙を超えた、魂の叫びそのものだ。ボロボロになりながらもマイクの前で笑顔を咲かせるスズ子の姿は、演じる趣里自身の人生の葛藤や舞台への渇望と完全に重なり合っていた。朝の茶の間に強烈なエネルギーを送り届けたこの作品によって、彼女は名実ともに日本中から愛されるトップランナーへと飛躍を遂げたのである。