2023年5月、歌舞伎座の『團菊祭五月大歌舞伎』において、彼は本名の「眞秀」をそのまま名跡とし、初代「尾上眞秀」を正式に襲名しました。伝統芸能の世界において、本名をそのまま芸名に採用した尾上眞秀の襲名理由には、両親の深い哲学が込められています。
「まほろ」という響きは、日本の古語である「大和は 国のまほろば(優れた場所、美しい地)」に由来しつつ、フランス語圏でも発音しやすく親しまれやすい響きを持っています。漢字の「眞秀」には、「真実を貫き、秀でた存在になってほしい」という願いが込められました。寺島まほろの父親であるローラン・グナシア氏は、息子が日本の伝統に根ざしながらも、国際社会で通用するアイデンティティを確立することを強く望んでおり、日仏両国の文化を背負う象徴としてこの名が選ばれました。
ここで改めて音羽屋の家系図を整理すると、彼の背負う重みと特異性が浮き彫りになります。祖父は人間国宝の七代目尾上菊五郎、祖母は女優の富司純子、叔父には八代目尾上菊五郎の襲名を控える五代目尾上菊之助、そして従兄弟には尾上丑之助がいます。歴史ある名門において、フランス人の血を引く男子が歌舞伎界の本格的な役者として名乗りを上げたことは、400年を超える歌舞伎の歴史においても前例のない画期的な出来事でした。