通夜や葬儀の際、不祝儀袋の文字を薄墨で書く習慣は広く浸透しています。これには「突然の訃報に驚き、墨を十分に磨(す)る間もなく駆けつけた」「悲しみのあまり流した涙で墨が薄まってしまった」という、遺族に対する深い哀悼と思いやりの情が込められています。
しかし、三回忌香典薄墨濃墨の理由を紐解くと、三回忌において薄墨を使うことは不適切であることが明白になります。仏教の多くの宗派において、故人は没後四十九日を迎えることで現世の迷いを離れ、成仏して極楽浄土へ至るとされています。そして満2年目に行われる三回忌は、遺族も哀しみを乗り越えて前を向き、故人の冥福を仏として祈る追善供養の場です。
あらかじめ法要の日取りが決まっている三回忌で薄墨を使用すると、「突然のことで準備ができなかった」「いつまでも涙を流して成仏を妨げている」と受け取られかねません。そのため、四十九日法要を境に、一周忌、三回忌以降の法要では濃い黒墨(通常の毛筆または黒の筆ペン)を用いて、姿勢を正し丁寧に文字を記すのが古くからの正しい作法です。文具店やコンビニエンスストアで販売されている「薄墨筆ペン」は通夜・告別式用であり、三回忌用には通常の「黒色」を選択してください。