SNSや知恵袋、美容医療系掲示板では、「歯列矯正で口元が下がりすぎた」と吐露する当事者の切実な告白が連日投稿されています。「口元を引っ込めたくて4本抜歯したのに、完成したら魔女のような横顔になった」「笑ったときに歯が見えにくくなり、笑顔が不自然で人前で笑えなくなった」といった声は氷山の一角に過ぎません。中には、口唇の閉鎖圧が変わり、発音時の舌の収まりが悪くなったことで、不定愁訴や軽度の摂食違和感を訴える声すら散見されます。
臨床の現場では、近年のデジタル矯正ブームに伴う「インビザラインでの引っ込みすぎ失敗」相談が2024年から2026年にかけて急増しています。マウスピース型矯正装置は、シミュレーションソフトウェア上で歯を均等かつ後方へ移動させる計画を容易に設計できる反面、歯冠のみが内側に倒れ込む「舌側傾斜(ティッピング)」を起こしやすい特性を抱えています。歯の根(歯根)が骨の中に残ったまま頭だけが内側に倒れると、唇を支えるボリュームがごっそりと奪われ、正面から見た際の貧相な印象が一気に強まります。
現場取材に応じたある矯正歯科専門医は次のように打ち明けます。「患者さんが『抜歯矯正を後悔する理由』の根本には、動的治療が終わる直前まで主治医とゴールイメージの共有がなされていない現実があります。『歯並びは治ったのだから成功だ』と主張する歯科医と、『こんな顔貌になるなら元の八重歯のほうがマシだった、抜歯矯正を元に戻したい』と絶望する患者との間で、埋めがたい意識の断絶が起きているのです」。