国民的映画シリーズ『男はつらいよ』において、大原麗子は複数回マドンナを務めた数少ない名女優の一人である。車寅次郎(寅さん)を翻弄しつつも、深い優しさと包容力で包み込むその役柄は、彼女の女優としての器の大きさを証明してみせた。
スクリーンに映し出される彼女は、ただ守られるだけのヒロインではない。傷つき、悩みながらも自分の足で立とうとする芯の強さを持っていた。だからこそ、寅さんだけでなく観客全員が本気で恋をした。時に見せる悪戯っぽい笑顔と、ふいに影を帯びる横顔のコントラスト。映画館の暗闇の中で、人々は彼女の表情一つひとつの変化に胸を痛め、歓喜したのだ。