しかし、栄光の影で悲劇は静かに進行していた。全国ツアーの真っ最中、突如として声帯に異変が生じる。狙った音程が出ない。声が引っかかり、音にならない。喉の病気かと思われた症状の正体は、心身の過度な負荷やプレッシャーが引き起こす「心因性発声障害」だった。
「歌えないヴォーカリスト」という存在理由を揺るがす地獄。病院を渡り歩き、あらゆる治療法を試しても、失われた声は戻らない。解散、そして静寂。14年という歳月は、一人の表現者にとって永遠にも等しい時間だった。だが彼は音楽を捨てなかった。山にこもり、土と触れ合い、心の内面と対話しながら、もう一度「声」を取り戻すための途途方もないリハビリを重ねていった。