感情の高ぶりを表す万能語といえば「やばい」が筆頭に挙げられる。では、「やばい」と「えぐい」の境界線はどこにあるのだろうか。『三省堂国語辞典』の編纂者として知られる国語辞典編纂者の飯間浩明氏は、言葉の街頭観察や辞書収載の議論を通じ、現代語の微妙なニュアンスの変化を緻密に分析している。株式会社三省堂の発行する辞書においても、言葉の生命力とその変容は絶えずアップデートされている。
両者の違いを解き明かす鍵は、「生々しさと度合いの深化」にある。「やばい」が危険や驚き、美味しさなどあらゆる感情を全方位に拾い上げる汎用カードだとすれば、「えぐい」はより過激で、鋭利で、生理的な揺さぶりを伴う状況に特化している。ただ単に「凄い」のではなく、人間の予測や許容量を遥かに超えた怪物的・衝撃的な事象に直面したとき、言葉の使い手は「やばい」ではなく「えぐい」を選択する。感嘆の純度と衝撃のグラデーションにおいて、明確な書き分けがなされているのだ。