世界文化遺産としての富士山が真に試されているのは、まさに今だ。「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」という登録名が示す通り、その価値は自然景観だけにとどまらない。古来より人々が寄せてきた敬畏の念や、葛飾北斎をはじめとする芸術家たちに与えたインスピレーションこそが本質である。
展示室に並ぶ浅間神社ゆかりの古文書や、修験者たちが身につけた装束の展示は、ただ歴史を伝えるだけでなく、「なぜこの山が聖地なのか」という問いを静かに投げかけてくる。観光客がその問いを持ち帰ることこそが、過剰な消費から富士山を守る最大の防壁となるはずだ。